今年10月8日、国務院第66回常務会議で『ビジネス環境改善条例』が可決されました。当該条例は全7章、72条からなり、市場主体の保護強化、市場環境の浄化、行政サービスの改善、監督管理・法執行の規範化、法制の保障強化の5つの面について重点的に規定しています。当該条例は2020年1月1日より施行されることになっており、この中で日系企業に密接に関わる規定には以下のものがあります。

1.外商投資企業に対する平等な扱い
   中国は、統一開放された、秩序ある競争の行われる現代的市場体系の確立を急ぎ、法により各種の生産要素の自由な流動を促進し、各種市場主体による公平な市場競争を保障すると同時に、対外開放をさらに拡大し、外商投資を積極的に促進し、中国資本企業、外商投資企業等の各種市場主体を平等に扱う。このことは日系企業が中国で行う投資や事業展開に基本的な保障を与えるものとなる。

2.クロスボーダー貿易の利便性向上を促進
   中国政府及び関係機関では、クロスボーダー貿易の利便性向上の促進に関する国の要求に応じ、法により輸出入にかかる審査認可事項の削減、不要な監督管理要求の廃止、通関手続きの簡素化改善、通関の効率向上、通関地での料金徴収の整理・規範化、通関コストの引き下げ、通関地と国際貿易分野の関連業務を統一し国際貿易の「単一窓口」での処理を推進する。このことはクロスボーダー貿易に従事する日系企業にとり、業務効率の大幅な向上、コスト節約となる。

3.市場参入ネガティブリスト制度の実行、確実な減税・手数料引き下げ
   中国は引続き市場参入要件を緩和し、全国統一の市場参入ネガティブリスト制度を実行する。市場参入ネガティブリスト外の分野において、各種の市場主体は法により平等に参入できる。政府や関係機関は、国の各種の減税・手数料引き下げの政策を厳格に履行し、政策を実施する中で生じる具体的な問題は速やかに検討して解決し、減税・手数料引き下げの政策を全面的かつ速やかに、市場主体に享受させる。このことは、日系企業の関連市場分野への平等な参入、税金や手数料の負担軽減に大きな意義を持つ。

4.規範的で効率よく、スピーディな行政サービス
   法規、規則に別段の規定がある場合を除いて、企業が移転した後、所持する有効な許可証類を改めて取得し直す必要はないものとする。政府及び関係機関では行政サービスの標準化、行政サービス基準の細分化、定量化を進め、同一事項における差別のない受理、同一基準による処理を推進する。法律、法規、規則による根拠なく、行政サービス事項の手続き条件やプロセスを新たに設けてはならない。このことは日系企業が現在直面している、同一事項についての手続き重複や受理における差別的な対応等の問題の解決への一助となる。

   『ビジネス環境改善条例』の公布は、中国政府の「放管服」改革の全面的な踏み込んだ発展を体現するものであり、中国のビジネス環境は市場化、法治化、国際化が進み、より公正で透明性のあるものになりつつあります。当該条例は、開放型の経済システムの全面的な構築に関する中国政府の要求を法規の制度に転化したものであり、対外開放のさらなる拡大を明確に掲げ、日系企業の市場参入緩和、よりハイレベルな開放型経済の発展に、法治面の保障を提供するものとなっています。

   特に注目される点として、一定の事項に関し、当該条例中の条項は原則的な規定に留まり、具体的な実施細則や司法解釈はまだ制定されていません。このため、日系企業では、当該条例の最新動向に引続き注目のうえ、法律事務所や関係政府機関への積極的な確認を行うことの必要性は極めて高いといえます。