勤務時間中に業務と関係なくネット動画や音楽を視聴したり、ネットショッピングをしている従業員への対処は、経営者を悩ませる難題の一つです。最近も中国の家電販売大手の国美で、勤務中にネットゲーム、音楽、動画視聴等、業務と関係のない行為をしていた従業員が処罰されたことが、広く注目されました。一方で、企業が従業員のネット利用を監視する権利はあるのか、従業員のプライバシー権侵害ではないのかという議論も盛り上がっており、今回はこの問題について分析いたします。

1.企業は従業員のネット利用状況を監視できるか
   職場にインターネット環境がある目的は、企業の業務効率を高めるためであり、従業員が勤務時間中にネットゲームや音楽を視聴することは目的に反します。国美のケースでは、就業規則により職場で業務と関係ないことをしてはならないと明確に規定されており、従業員がネット視聴によりデータ通信量と時間を浪費することは明らかに会社の就業規則に違反することとなります。『インターネット安全保護技術措置規定』第8条でも、企業はネットワークの運行状態を記録、追跡し、ネットワーク安全の事件をモニター、記録する安全監査機能を実行することができるとされています。このため、法律、企業の就業規則、従業員としての心得のいずれからしても、企業には社内のネットワーク使用状況を監視する権利があるといえます。

2.企業が従業員のネット使用行為を監視することはプライバシー権の侵害にあたるか
   企業が従業員の業務状況について知ることは管理権行使のうえであり、自社の有するネットワークの使用状況を監視するのであって、従業員個人のネットワークに直接侵入するわけではありません。このため、従業員の業務内容は『民法典』第1032条に規定されるプライバシー権の範疇に含まれず、従業員のプライバシー権の侵害とはなりません。

◇日系企業が勤務時間中の業務と関係のない行為を防止、制止するためには
   従業員の勤務時間中の業務と関係のない行為を防止し、企業としての業務効率を上げるためには、就業規則を整備し、確実に運用させる必要があります。さらに従業員とのコミュニケーションを強化し、時間や会社の資源を合理的、効率的に利用する意識を持たせ、仕事の質や責任感の向上に共に取り組む姿勢を養うことで、企業の発展へとつながります。