今年3月1日から正式に施行が開始された『市場主体登記管理条例』(以下『条例』という)は、中国で初めて、各種の市場主体の登記管理を統一して規範化した行政法規となっています。『条例』の実施を保障するために、市場監督管理総局では同時に『市場主体登記管理条例実施細則』(以下『実施細則』という)を制定・公布し、休業等の関連制度の具体的内容についてより明確に定めました。以下では『条例』及び『実施細則』のポイントとなる内容をご紹介いたします。
1.「休眠」に類似する休業制度についてより詳細に規定
『実施細則』では休業するための条件、休業期間中の義務、休業終了とみなす事由、違反した場合の法的責任等について規定されているほか、企業が休業する前に従業員と協議したうえで、労働契約を中止又は解除するのか、賃金を支給するか、社会保険料等を納付するか等、適切に処理すべき労務問題についても具体的に規定されています。
また、休業する市場主体は期限通りに年度報告を公示しなければなりません。このほか、経営活動の再開を自ら決定したかすでに再開している主体は、30日以内に国家企業信用情報公示システムを通じて休業終了を公表しなければならず、公表しなければ是正を命じられ、最高で3万元以下の罰金を科される可能性があります。
2.新たに盛り込まれた登記、届出手続き時の実名認証、電子署名等の内容
『実施細則』では、登記、届出の手続きを行う際に、会社の法定代表者、董事、監事、代理人等による実名認証が必要となることを新たに規定しました。外国籍の人員が実名認証システムで身分情報を照合できなければ、パスポート等の身分証明書について法により取得した公証証書を提出するか、本人が身分証明書を持参して窓口で手続きするといった方法で対応することができます。
3.登記取消しの制度及び虚偽の登記に対する法的責任を詳細に規定
企業による虚偽の登記の防止管理を強化するため、『実施細則』では登記を取り消す制度について、法令の制定によってより詳細に定めたうえ、企業が虚偽の書類を提出した場合の法的責任についても明確化しました。
登記機関が企業の提出する書類について実質的審査を行うことはないものの、虚偽、詐欺、隠匿等の手段で行われた登記については取り消すことができるとともに、最高100万元以下の罰金を科し、営業許可証を取り上げるとされています。
◆ 日系企業へのアドバイス
上記のポイントのほか、かねて現地日系企業で重要課題となってきた経営範囲の記述方式の問題についても、国家市場監督管理総局の公布する「経営範囲規範目録」に従い、企業の所属業界や経営の特徴等に基づいて記述すべきことが、『実施細則』により明確に定められました。各日系企業では、現地政府が制定する関連規則に随時注目しながら会社の規則制度を適法に調整し、有効な対策を弁護士とともに講じて各種の登記手続きをスムーズに済ませられるようにするとよいでしょう。