2022年3月1日から施行された「市場主体登記管理条例」(以下「条例」と略す)にともない、大きな期待を寄せられている中国の休眠制度がすでに実施されています。休眠制度は、経営難に陥った現地企業の従業員の給与節減や、節税等の経営コストの削減に繋がるとともに、日本本社が現地企業の撤退か経営再開という最終的な結論を出すまでの時間稼ぎにもなります。休眠後一定の期間が経過してから経営再開を決定する場合、政府部門の手続きも非常に簡便で、日本本社に新たな選択肢を提供したと言えます。中国で以前にはなかった新制度であるため、多くの現地企業が市場監督管理局に休眠を届け出た後、税務局にこの旨を報告する必要があるかどうか、又は休眠期間中にどのように税務申告を行うべきなのか等について、非常に大きな関心を寄せています。
   なお、重大な違法行為などを理由に、現地企業が「信用喪失企業リスト」に登録されてしまうと、休眠申請が困難になるだけではなく、休眠期間中の納税申告の簡便化等の優遇措置の適用対象から外される可能性もあるため、注意が必要です。
   各企業の疑問や関心に応えるため、国家税務局が2022年6月14日に「市場主体の休眠と抹消に関する税務手続きの簡便化に関する公告」(以下「公告」と略す)を公表し、休眠期間中の納税申告の簡便化を規定しました。「公告」は2022年7月14日から施行されており、概要を次のようにまとめました。

   1.税務局に対して、単独で休眠を報告する必要はありません。情報時代の発展に伴い、政府部門もビッグデータ規制を強化しつつあり、市場監督管理局と税務局との間でネットワークの一体化が進められているため、企業が「条例」に従い市場監督管理局に休眠を申請した後の税務局への報告は求められていません。(第一条第(一)項)

   2.子会社を設立していない企業で、月ごとに企業所得税の申告と予定納税を行っている場合、休眠手続き終了後の次の四半期から、四半期ごとの申告・予定納税に移行することができます。(第一条第(二)項第1号)

   3.子会社を設立している企業の場合、月ごとに企業所得税の申告と予定納税を行っている場合、本社の休眠手続き終了後の次の四半期より、本社と子会社とも四半期ごとの申告・予定納税に移行します。子会社だけが休眠手続きを行っだ場合、本社と子会社の申告・予定納税期限は現状維持となります。(第一条第(二)項第2号)

◇日系企業へのアドバイス
   最長で3年間を上限とする期限付きの休眠制度は、経営判断における新たな選択肢となりました。手続きにあたっては弁護士と事前に相談のうえ、法務面、税務面で適切に対応することが必要となるでしょう。