12月9日、最高人民法院より『食品安全をめぐる民事紛争案件の法律適用にかかる若干の問題に関する解釈(1)』(以下『解釈』という)が公布され、2021年1月1日より施行されることとなっています。
   近年頻発している食品安全事件により、消費者の健康が侵害を受けるだけでなく、市場の秩序の乱れという影響も生じています。食品安全紛争における顕著な実務問題を解決するために、最高人民法院により本『解釈』が制定されました。今回は『解釈』のポイントと留意点をご紹介いたします。

◆『食品安全法』の一部の条項についてのさらなる説明、明確化

   生産者、経営者は消費者による賠償要求への賠償金支払いを先行すべきであり、相互に責任を転嫁し合ってはならないことをさらに説明した(第1条)。
   経営者に期限切れ食品の販売、入荷時検査義務の未履行等6通りの事由(第6条)がある場合には、食品安全標準に適合しないことを「明らかに知りながら」販売したと認定されてしまい、損失の賠償のほか、懲罰性賠償も負うことになる。

◆実践中によくある紛争問題についての明確化
   食品が中国の食品安全標準に違反した場合、人身への損害がなくても、生産経営者は懲罰性賠償責任を負うべきことを明確に規定した(第10条)。
   経営者が欠陥に対して数倍の賠償を約束しており、販売した食品が食品安全標準に適合せず、約束した賠償金額が法定賠償金額を上回る場合、裁判所は経営者に対し、約束した金額により賠償責任を履行するよう求める。
   このほか、輸入食品は中国の食品安全標準に適合していなければならず、輸入業者/経営者は、食品が中国出入国検査検疫機関による検疫を通ったこと、輸出国の標準に適合していることを理由に、食品が中国の食品安全国家標準に適合するとして免責を主張することはできない。

◆日系企業の留意点
   新型コロナウイルスの影響下において、生産者がデッドストックとなっていた食品を、値下げ、割引等して経営者に販売するにあたっては、期限内に販売し、期限の切れたものは販売しないよう経営者に指示し、製造日の改ざん等をさせないよう注意が必要です。注意を怠れば、生産者、経営者が損失や懲罰性賠償等の民事責任を負うだけでなく、政府機関より行政罰を受け、信用が損なわれる恐れもあります。