先般メディアで大きく取り上げられた「アリババ女性従業員へのセクハラ事件」が、最近再び社会の注目を集めています。加害者の男性従業員が8月に済南市公安機関に刑事拘留された後、9月6日になって同市検察機関が、王氏(加害者男性)は犯罪を構成しないとして逮捕を承認せず、行政拘留15日の処罰を決定しました。

   『労働契約法』第39条第(6)号の規定では、従業員が法により刑事責任を追及された場合、会社が労働契約を解除する権利があることは疑問の余地がないこととされています。それでは、犯罪を構成せず、従業員が刑事責任を追及されていない場合、会社が当該従業員との労働契約を解除することは違法となるのかどうか、疑問に感じる方も多いと思います。

   確かに、刑事拘留は刑事訴訟のプロセスとしての強制措置にすぎず、その目的は犯罪容疑者を拘束し、逃亡を防止することが目的です。刑事拘留されたからといって、司法機関が犯罪行為の存在を認定したことを意味するわけではありません。従業員が拘留されて会社が労働契約を解除することの適法性の判断には、実務において異なる見解が存在するものの、一般的には、就業規則中に明確な規定があるかどうかによって決まります。違法解雇とならないために、以下の点に留意する必要があります。

(1)就業規則中に次のような規定を設けておく:「従業員が法律法規の規定に違反し司法機関に拘留される(刑事拘留、行政拘留、司法拘留を含む)か、刑事責任を追及された場合、会社は経済補償金を支払わずに労働契約を解除することができる。」

(2)上記の就業規則規定を適用するにあたり、契約解除のタイミングを慎重に選ぶようにする。従業員が拘留され、行政罰を受けたものの、最終的に司法機関が行政罰の取消しを決定した場合は、行政罰は下されなかったことになり、その場合は契約を解除できない。

◆日系企業へのアドバイス
   就業規則は会社の適法な従業員管理や労働関係解除の根拠となるため、その重要性はどれだけ強調しても足りません。社内で就業規則の見直しを行う際には、上記のような規定が盛り込まれていることを確認するとともに、従業員へのコンプライアンス研修を強化し、違法犯罪行為によって会社から解雇されることのないよう、呼びかけることをお勧めします。
   弊所では毎年定期的に、現地企業の中国籍従業員を対象とした社内管理やコンプライアンスに関する研修をご提供しています。ご要望があれば、ご遠慮なくお気軽に弊所までご連絡ください。