9月28日、国家インターネット情報弁公室は『国境を越えたデータの移動を規範化・促進する規定(意見募集稿)』に関するパブリックコメント募集の通知(以下『意見募集稿』)を発表し、10月15日までパブリックコメントを求めています。データおよび個人情報の国境を越えた提供に関する監督管理規則に関するこの新たな調整は、国を跨ぐ企業や外資系企業にとって大きな影響を与えるものとなります。今回は、この『意見募集稿』より、日系企業の皆様にご参考いただける点を簡単にご紹介いたします。

1.国を跨ぐ貿易や生産制造、マーケティングデータなどの越境移転の関連手続きは不要
   この『意見募集稿』では、国際貿易、学術協力、多国籍生産制造とマーケティングなどの活動上発生するデータの越境移転は、①データ越境移転安全評価の申告、②個人情報越境移転標準契約への署名、③個人情報保護認証のいずれの手続きも踏む必要がないと規定しています。 (『意見募集稿』第1条)
   ただしこれは、そのデータに個人情報や重要データが含まれていない場合に限られる、という点に注意が必要で、これらが含まれている場合は、上記3つの手続きのうちいずれかを実行する必要がある可能性があります。

2.個人情報の越境移転が1万人未満の場合、関連手続きは不要
   これまでの『個人情報保護法』では、個人情報の越境移転がある場合は、上記1で述べた3種類の手続きのうち1つを履行する必要がある、と規定されていました。こうした企業の負担を軽減するため、今回の『意見募集稿』の中では、1年以内に海外に個人情報を提供する予定が1万人未満である場合は、上記3種類の手続きを履行する必要はないこと規定しています。(『意見募集稿』第5条)
   ただし、海外に個人情報を提供する場合は必ず個人情報主体の単独同意を得る必要がある、という点を覚えておかなくてはなりません。なお、ここで述べている「1年以内」という期間をどう確定するのか、および実際の越境移転が、予定していた数量を超えてしまった場合はどのように処理するかについては、更なる確定を待つ必要があります。

◆日本企業の皆様へのアドバイス
   この『意見募集稿』は現在パブリックコメントを求める段階にあり、今のところ法的効力はないものの、審議を通過し実施されれば企業のデータ越境移転に係るコンプライアンスコストを大幅に削減することができ、国を跨ぐ企業や機構にとって効率の良い利便的な商業貿易活動運営を促進するものとなります。2023年末までには、これが新規則として正式に発表される見込みです。
   また同時に、『意見募集稿』で一部義務の免除が規定されているものの、これは単に中国政府による企業への事前監督管理の軽減を意味するもので、実質的な法遵守義務は依然として免除されていません。 例えば、もしデータや個人情報の越境移転に安全面のリスクや隠れた危険性が存在した場合、企業が政府当局からの処罰や指摘を受ける可能性があるため、個人情報の越境移転影響評価を行い、データと情報の伝送における安全実現のために、関連する技術面または管理面の措置を講じる必要があるといえるでしょう。